2022年7月13日
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBM Powerテクニカルセールス
三神 雅弘
IBM Powerの最新プロセッサーPower10を搭載したモデルは、2021年9月に発表されたハイエンド・モデルPower E1080に続き、2022年7月にスケールアウト・モデルとミッドレンジ・。モデルが登場しました。今回登場したのは、以下の7モデルです。
・スケールアウト
Power S1014
Power S1022
Power S1022s
Power S1024
Power L1022
Power L1024
・ミッドレンジ
Power E1050
ここでは、スケールアウト・モデル(以下SCOモデル)について取り上げていきます。
Power10 SCOモデルのラインアップ
SCOモデルは、1ソケット4U/タワーのPower S1014, 2ソケット2UのPower S1022/S0122s/L1022, 2ソケット4UのPower S1024/L1024の6モデルです。
Power L1022, Power L1024はLinuxモデルです。Power9のPower L922はLinux専用モデルでしたが、Power L1022/L1024はコアの25%まではAIX、IBM i で使用することが可能です。
Power S1014, Power S1022sは、エントリーモデルの位置付けとなります。これら2モデルのPower10プロセッサーはシングル・チップ・モジュール(SCM)、Power S1022/L1022, Power S1024/L1024はデュアル・チップ・モジュール(DCM)です。
Power10 SCOモデルの特徴
Power10プロセッサーの機能であるAI推論、機械学習を実行するMatrix Math Accelerator (MMA)、透過的なメモリー暗号化は、Power10 SCOモデルでも可能になります。
IBM i 7.5で追加されたデータ圧縮のためのZLIBアルゴリズムは、Power10プロセッサーのオンチップNest Accelerator(NX)GZIPを自動的に使用することで、少ないCPU負荷で、より高速に圧縮オプションを実行することができます。
メモリーは、ハイエンド・モデルの Power E1080と同じDifferential Dual Inline Memory Module (DDIMM) テクノロジーを採用し、業界標準のDIMMと比較してメモリー可用性が2倍に向上しています。メモリーに関しては、Power9ではエンタープライズ・モデルのみ可能であったActive Memory Mirroring (AMM)が、Power10 SCOモデルでも構成可能になりました(Power S1014を除く)。AMMの構成によってPowerVMハイパーバイザーで使用される重要なメモリー領域が二重化され、システムの可用性が向上します。AMMを構成する場合は、メモリーDIMMを最低8枚(4フィーチャー)構成する必要があります。
PCIeスロットは、Gen5が採用されます(一部スロットはGen4)。
I/O拡張ドロワーは、従来のPCIe Gen3 6スロットのFanoutモジュールが接続可能です。Fanoutモジュールの接続数は、1ソケット構成では1台、2ソケット構成では最大4台となります。Power9 SCOモデルでは、接続できるFanoutモジュールは2ソケット構成で最大3台ですので、1台分(6スロット)多く構成することが可能になります。
Power10 SCOモデルの内蔵ディスクは、NVMeドライブのみとなります。Power S1014, S1024/L1024では、NVMe U.2ドライブを最大8個搭載可能なバックプレーンを2台まで構成が可能で、最大16ドライブを搭載することができます。Power S1022, S1022sでは、NVMe U.2ドライブを最大4個搭載可能なバックプレーンを2台まで構成が可能で、最大8ドライブを搭載することができます。バックプレーンのU.2ドライブに加えて、PCIeアダプタータイプのNVMeドライブを本体のPCIeスロットに搭載することも可能です。なお、NVMe U.2ドライブ用バックプレーン1台につきPCIeスロットを1スロット使用しますので、ご注意ください。IBM i ではNVMeドライブはIBM i 7.4 TR1以降でのサポートでしたが、Power10 SCOモデルに合わせてIBM i 7.3でもサポートされるようになります。
HDD, SSDドライブは、EXP24SX SASストレージ・エンクロージャーを接続することで構成可能になります。EXP24SXを接続するためのSASアダプターは、従来のアダプターがPower10 SCOモデルでもサポートされます。
Power10 SCOモデルのサービス・プロセッサーは、これまでのFSPに代えてEnterprise Baseboard Management Controller (eBMC).が搭載されます。eBMCはPCIeアダプターで、HCM/ASMIを接続するEthernetポート、UPSケーブルを接続するUSBポートが提供されます。FSPを使用するシステムでは、仮想化を管理する情報はFSPを介してHMCと通信されていますが、eBMCではHMCがサーバーのFWスタックと直接通信します。また、ASMIを使用する際の画面が一新されます。
次に、Power10 SCOの各モデルについてみていきます。
Power S1014 (9105-41B)
Power S1014は1ソケットのエントリーモデルで、4Uラックマウント型またはタワー型の筐体が選択可能です。
Power10プロセッサーは、シングルチップ・モジュール(SCM)の4コアまたは8コアが提供されます。
メモリーは最小32GB、最大1TBです。
IBM i での機械グループは、4コアはP05、8コアはP10です。
IBM i 4コア構成では、メモリーは最大64GB、内蔵NVMeドライブは最大6.4TB、拡張I/Oドロワー、EXP24SX SASストレージ・エンクロージャーを接続することはできません。
Power S1014は、100V電源機構をサポートします。100V電源機構を構成する場合は、2+2の冗長構成となります。
PowerサーバーにはEthernetアダプターを最低1枚構成することが必須となっていますが、Power S1014は4ポート1Gb Ethernetsアダプターをオーダーすることが可能な唯一のモデルです。
Power S1022s (9105-22B)
Power S1022sは2Uラックマウント・モデルです。
Power10プロセッサーはシングルチップ・モジュール(SCM)の4コアまたは8コアで、8コアは2ソケットの構成が可能です。
メモリーは1ソケット構成では最小32GB、最大1TB、2ソケット構成では最小64GB、最大2TBです。
4コア構成の場合は、IBM i はサポートされません。IBM i はVIOSでの仮想環境でのサポートで、1区画に構成できるコア数は最大4コアです。IBM i のプロセッサー・グループはP10です。
Power S1022 (9105-22A), Power L1022 (9786-22H)
Power S1022/L1022は2Uラックマウント・モデルです。
Power10プロセッサーはデュアルチップ・モジュール(DCM)の12コア、16コア、20コアで、12コアは1ソケットまたは2ソケット、16, 20コアは2ソケットの構成です。
メモリーは1ソケット構成では最小32GB、最大2TB、2ソケット構成では最小64GB、最大4TBです。
IBM i はVIOSでの仮想環境でのサポートで、1区画に構成できるコア数は最大4コアです。IBM i のプロセッサー・グループはP10です。
Power S1022s/S1022/L1022は奥行きが812mmと長いため、ラックへ搭載する際の注意があります。IBM S42ラックへ搭載する場合には、下記のいずれかの対応が必要になります。
・ラック・エクステンションを構成して、ラックの奥行きを伸ばす
・ケーブル・マネージメント・アームを取り付けない
・ラックの背面ドアを取り外す
Power S1024 (9105-42A), Power L1024 (9786-42H)
Power S1024/L1024は4Uラックマウント・モデルです。
Power10プロセッサーはデュアルチップ・モジュール(DCM)の12コア、16コア、24コアで、12コアは1ソケットまたは2ソケット、16, 24コアは2ソケットの構成です。
メモリーは1ソケット構成では最小32GB、最大4TB、2ソケット構成では最小64GB、最大8TBです。
IBM i のプロセッサー・グループは、12コアはP20、16, 24コアはP30です。
Power S1022/L1022, S1024/L1022は、Power Private Cloud with Dynamic Capacity (PEP 2.0)をサポートします。PEP2.0のプールは、Power S922, S924と混在することが可能です。
以上、駆け足で今回発表になったPower10プロセッサー搭載のスケールアウト・モデルをご紹介いたしました。ローエンド機ながらAI推論を実行するMMAやメモリー暗号化など時代に即した機能を搭載した新しいIBM Powerにご期待ください!