~ バックアップ Hints & Tips ~
概要
IBM Power Systems Virtual Server(以降、Power VS)の環境を使用して、保管および復元における2ソリューションについてのレスポンス検証を以前実施しましたが、追加でIBM Cloudで提供が開始された StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)の検証を行いましたので、以前の結果に追加致します。
(※ 2022年11月30日開催「IBM Power 朝会」の内容に一部修正・加筆致しました。)
【対象製品とデータ保管先】
- IBM Cloud Storage Solution for i (CS4i) → IBM Cloud Object Storage(ICOS)
- Hybrid BACKUP → IBM Cloud IaaS Server(Windows Server2019)
- StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)→ IBM Power Systems S922(Linux)
背景・目的
Power VS上の IBM i 環境ではテープ媒体へのバックアップがサポートされていないため、バックアップソリューションを検討する必要があります。そのためIBM社推奨の CS4i を使用して ICOS への保管/復元と、VINX社の Hybrid BACKUPを使用して IBM Cloud上のWindows Serverへの保管/復元操作の実測を以前行い、レポートを作成しました。(公開済)
今回は、その後提供が開始されたVTLについて検証を行い、それぞれのバックアップソリューションの特徴を確認することを目的としています。
製品概要
<IBM Cloud Storage Solution for i (CS4i)>
IBM i のデータのIBM Cloud Object Storage(ICOS)への保管/復元を実現するバックアップソリューション
<Hybrid BACKUP>
IBM i のデータを、Disk to Diskで保管/復元可能にするバックアップソリューション
<StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)>
IBM i にはテープライブラリー装置として認識される、PowerVSのインスタンスとして稼働するバックアップソリューション
構成内容
使用した機器の仕様は以下の通り。
Power Virtual Server
- データセンター:東京04
- モデル:S922
- ディスク容量:SSD 180GB(540 IOPS)
- メモリ:8GB
- コア数:0.25(3750CPW)
- OS:IBM i 7.4
- 一次言語:2962(日本語)
- QCCSID:5035
- 検証ライブラリー容量:10GB(2GB、3GB、5GBの3ファイル)
IAサーバー(IBM Cloud)
- WindowsServer2019 Standard
- CPU:Xeon Gold 6140 2.30Ghz
- メモリ:8GB
StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)
- データセンター:東京04
- モデル:S922
- ライセンス・リポジトリー容量:SSD 1TB(3,000 IOPS)
- メモリ:18GB
- コア数:2
- ブート・イメージ:VTL-FalconStor-10_03-001
ネットワーク
- IBMクラウド ― イグアス社(川崎本社)間のVPN 接続環境を利用(IPSec VPN 100Mbps)
検証内容
IBM Cloud Storage Solution for i (CS4i)
保管対象ライブラリー(10GB)について、圧縮ありと圧縮なしの2パターンにおける保管/復元時間の測定を行いました。
ICOSへのアクセスルートは、Private ルートでの結果を報告しています。 (下記検証概要図参照)
Hybrid BACKUP
保管対象ライブラリー(10GB)について、圧縮ありと圧縮なしの2パターンにおける保管/復元時間の測定を行いました。
保管先はIBM Cloud上のWindows Serverのディスクを使用しました。
StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)
保管対象ライブラリー(10GB)について、圧縮ありパターンにおける保管/復元時間の測定を行いました。
検証概要図
検証構成イメージは下図の通り。
- ICOSとのアクセスは、Privateルートパターンで検証を実施しました。
検証結果
バックアップソリューション検証結果
圧縮率が高いのはCS4i、保管/復元時間が速いのは FalconStore VTLという結果になりました。
注)CS4i 欄の保管/復元時間は、OSコマンドの実行時間とICOSへの転送時間の合計。
検証結果
- CS4i の保管/復元操作は、OSコマンド(SAVLIB/RSTLIB)の操作とICOSとの転送時間の合計値となっています。
- CS4iを使用したICOSへの保管/復元の場合、仮想テープ装置経由になるため、インスタンス(区画)に構成されているディスク容量のサイジングが重要です。
- 保管/復元時間は仮想テープ装置へのアクセスがあるため、インスタンス(区画)に構成されているディスクへの負荷が高くなります。そのため、構成されているディスク容量が小さい場合、ディスク性能(IOPS)がネックとなり保管/復元時間が長くなる可能性があります。
- Hybrid BACKUPの保管/復元時間は圧縮無しより圧縮有りの方が、多少ですが遅くなるようです。
StoreSafe VTL for PowerVS(VTL)
- FalconStore VTL は、稼働インスタンスのリソース要件が保管/復元時間に影響すると考えられます。
Power上で稼働するため、保管/復元時間のパフォーマンスは、他のソリューションより良い結果となっています。 - FalconStore VTLコンソールとして、Windows環境マシンが必要です。
バックアップソリューション比較
今回検証しました3製品について簡単にですが、以下の通りまとめました。
CS4i利用でのICOSへの保管とHybrid BACKUPは、小規模データ向きです。大容量データのバックアップを行う場合は、別途その運用について検討が必要と考えます。FalconStore VTLは価格面から考えても大容量データ向きであり、例えば複数インスタンス(区画)の統合バックアップなどに最適です。またFalconStore VTLへのバックアップでも、アクセス頻度の低いデータはICOSにアーカイブすることにより、利用料の軽減も可能になります。しかし単に金額だけで判断するのではなく、バックアップに関してその運用や管理、さらには現行業務アプリの変更有無などの影響などをトータルで検討し、お客様へのご提案や自社採用に最適なソリューションを選択して頂ければと思います。
例えば、対象のバックアップデータが少ない場合はICOS、既存のWindows Server系のディスクに余裕があるならHybrid BACKUP、大量データと既存の業務アプリケーションの変更はできるだけ少なくしたいならFalconStore VTL というような検討も考えられます。
おわりに
PowerVSはテープ媒体へのバックアップがサポートされていないため、今回IBM i での代表的なバックアップソリューションについて比較検証を行いました。 今回の結果がPowerVSでのバックアップ手法検討の参考となりましたら幸いです。