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2024.06.20
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IBMのDouglas GibbsとSteve Willが語るIBM i の現在と未来(第1回)

IBMのDouglas GibbsとSteve Willが語るIBM i の現在と未来(第1回)

2024年5月20日から4日間にわたってIBM i の世界最大級のイベント「COMMON POWERUp 2024」が開催されました。「COMMON POWERUp 2024」の模様は当サイトでもレポート済みですが、IBM i の開発製造元であるロチェスター研究所からも大勢のIBM i 開発者や事業責任者が会場に参加していました。

※併せて読みたい:「COMMON POWERUp 2024 参加レポート」

iWorld事務局は、IBM i 製品責任者であるDouglas Gibbs氏と日本でもお馴染みのIBM i チーフ・アーキテクトであるSteve Will氏にインタビューを行いました。

IBM Powerのビジネスが好調である背景、新モデル IBM Power S1012にかける思い、そしてIBM i のAI戦略など、両氏からたっぷり伺ったお話を3回に分けてお届けいたします。

インタビューに答えるテンガロンハット姿のDouglas Gibbs氏とSteve Will氏


まず、第1回は、ビジネス状況やハードウェアについてのお話から。

IBM i ビジネスは成長を続ける

iWorld事務局(以降は「iWorld」と記述):
IBM i が二桁成長という大成功を収めているとのこと、おめでとうございます。

Douglas Gibbs氏

 

Douglas Gibbs(以降は「Douglas」と記述):
POWERUpのオープニングセッションでご説明した通り、IBM iのビジネスはここ数年、何四半期も連続で成長を遂げています。この結果は、製品とコミュニティーの強さを示していると思います。

iWorld:
IBM iのビジネスの成長は、製品の値上げが寄与したものではないと仰っていましたね。では、新規ビジネスが牽引したのでしょうか?それとも、既存のお客様におけるワークロード増が牽引したのでしょうか?

Douglas:
その両方のミックスと言って良いと思います。パンデミックを経て、リモートで簡単に管理できるIBM i と Powerのプラットフォームが、改めて評価されました。また、企業買収を行ったお客様が、買収した企業のワークロードを吸収して、IBM i を拡大するケースも目の当たりにしました。さらに、既存マシンのアップグレードやリプレースだけでなく、IBM i に全く触れたことのない新規のお客様の参入もありました。

iWorld:
現在は、オンプレミスのマシンだけでなく、クラウドや仮想サーバーのPowerVS (IBM Power Virtual Server)もありますね。オンプレミスとPowerVSの両方が成長しているのでしょうか?

Douglas:
今や、PowerVSの顧客数は600社を超えたと思います。もちろん、純粋な金額では、オンプレミスのほうが大きな数字を稼ぎ出していますが、クラウドを採用するお客様が増えているのは明白で、前年対比の伸び率ではPowerVSの方が高くなっています。PowerVSにおけるIBM iパーティションのデプロイを更にシンプルにすることと、Power VSへのデータ移行を更に簡単にすることで、今後もこの傾向が続くことを期待しています。

新モデル Power S1012の狙い

iWorld:
先日発表された新モデルのPower S1012は、日本を含む各国のユーザーの声から生まれた小型機であると伺いました。ただ、S1012がターゲットとする規模が小さなお客様の場合、RPGⅢで開発した古いアプリケーションを何年も更新せずに使い続けている休眠顧客も多いように思われます。モダナイゼーションに消極的な休眠顧客の割合について、どのようにお考えですか?

Steve Will(以降は「Steve」と記述):
私たちが見てきた成長は、お客様が再投資し、モダナイゼーションを進めてくださっていることによるものです。もちろん、私たちは、お客さまが休眠状態から抜け出し、モダナイズしたいと思っていただけるよう、テクノロジーへの投資を続けています。S1012のような、より低コストのエントリー・モデルを市場に投入することで、お客様が非常に古いリリースのバージョンから、中間リリースを経て最新のリリースのバージョンに移行できるよう、ビジネス・パートナーの皆様と一緒にお手伝いしたいと考えているのです。

iWorld:
とはいえ、特に1コアのモデルにおいて、S1012は機能や拡張性が制限されているようにも見受けられますが?

Steve:
利用可能なオプションが限られているのは、オプションを少なくすればするほど、構成と生産が容易になり、最終的にコストが下がるからです。1コア・モデルは、非常に低コストのプラットフォームとなる設計です。旧型機を長期間使用されているお客様がリプレースに至らない理由の1つは、1コアより多くのコアは必要がないのに、従前は4コア・モデルが最小の選択肢だったからです。こうしたお客様が使われているアプリケーションはかなり古く、機能拡張の機会も多くはありませんでした。そのため、移行とモダナイゼーションを同時に検討していただきやすいモデルが必要だったのです。

iWorld:
低コストながら最新のオペレーティング・システムを搭載するモデルに移行することで、新しい機能や能力に触れるとともに用途を広げられる。 つまり、1コア・モデルのS1012への移行は、引き続き休眠状態に留まることを意味するのではなく、能力を拡大できるということなのですね。

Steve:
そうです。旧システムのままでは、能力を拡張できませんからね。 旧型機を長期間使用されているお客様が前進することで、私たちはさらなる支援が行えるようになるのです。

サブスクリプション・ライセンスとPower Next?

iWorld:
今回、ローエンド・マシンにおける永続ライセンスを終了し、サブスクリプション・ライセンスに統一したのは、大きな動きだったと思います。

Steve Will氏

 

Steve:
IBM i P05とP10クラスについて、2024年5月7日から永続ライセンスを廃止しました。つまり、新しいP05やP10のハードウェアを購入する際には、サブスクリプション・ライセンスを購入するか、ライセンスをサブスクリプションにコンバートする必要があります。サブスクリプションは、3~4年、あるいは5年のサブスクリプション期間を設定することで、プラットフォームの利用に必要となる費用を長期的に見通すことができます。また、年間課金の場合は、キャッシュフローを予測しやすくなります。多くの中堅企業にとって、キャッシュフローは非常に重要ですよね。

iWorld:
サブスクリプションにはSWMAもついてきますので、いつでも最新のOSが利用できるということもメリットですね。

Steve:
ええ。サブスクリプション・ライセンスへの移行は業界のトレンドであり、他のソフトウェア・ベンダーに比べると少し出遅れましたが、我々もサブスクリプションを推進しているのです。

iWorld:
ローエンド・モデル用のOSだけでなく、プロセッサー・クラスがP20やP30のものについてもサブスクリプション化されるというお話ですが?

Steve:
P20とP30も近日発表することになりますが、その前にIBM PowerHA SystemMirror for iとIBM Db2 Mirror for iのサブスクリプションの発表を行う必要があります。

iWorld:
なるほど。ソフトウェアのサブスクリプション化は進展しているようですが、ハードウェアの方はいかがでしょうか?以前、システム・サブスクリプションも発表されていたと記憶していますが?

Steve:
2022年にIBM i向けの最初のP05サブスクリプションを提供した際、S914とS1014のハードウェア・サブスクリプションも発表しました。しかし、正直なところ、私たちが期待しているほどの関心を集められませんでした。ローエンド・モデルのメーカー・リースを検討する人がもっと増えれば、将来的には、また、何かできるかもしれません。いずれは、ハードウェアとソフトウェアのサブスクリプションの組み合わせを検討するかもしれませんし、ソフトウェアだけにするかもしれません。何が求められているのかを市場から学び、その結果を踏まえて判断したいと思います。

iWorld:
優先順位はソフトが先ということですね。では、最後のハードウェアの質問です。Power11プロセッサーを搭載するモデルの登場は近いのでしょうか?

Douglas:
まず、第一に、名称についてはまだ何も言えないのです。対外的には、現在はPower Nextと呼んでいます。過去のPower新製品登場の典型的なパターンを見てみると、おそらく2025年のどこか、あるいは、2026年の早い時期に登場することになるでしょう。

iWorld:
そうですね。ハードウェアは、おおよそ4、5年周期でしたね。

Douglas:
はい、そうです。現在は、Power NextからPower Next+1に向けた作業が進行中で、各チームはシステムと設計に集中しています。ソフトウェアのロードマップがあるように、ハードウェアのロードマップもあり、これが現在進行中なのです。

iWorld:
それは楽しみですね!


第2回はチーフ・アーキテクトのSteve WillがIBM i のAI戦略について語ります。

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