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2024.07.08
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IBMのDouglas GibbsとSteve Willが語るIBM i の現在と未来(最終回)

IBMのDouglas GibbsとSteve Willが語るIBM i の現在と未来(最終回)

2024年5月に開催されたIBM i の世界最大級のイベント「COMMON POWERUp 2024」において、IBM i 製品責任者のDouglas Gibbs氏とIBM i チーフ・アーキテクトであるSteve Will氏にインタビューを行いました。

※併せて読みたい:「COMMON POWERUp 2024 参加レポート」

IBM Powerのビジネスが好調である背景、新モデルIBM Power S1012にかける思い、そしてIBM i のAI戦略など、両氏からたっぷり伺ったお話を3回に分けてお届けいたします。

最終回は、VS Code for iの話題を中心に、Douglas GibbsとSteve Willがオープン技術活用のメリットについて語ります。
(※インタビュー第1回はこちらから。第2回はこちらから。)

インタビューに答えるテンガロンハット姿のDouglas Gibbs氏とSteve Will氏


VS Codeの盛り上がり

iWorld事務局(以降は、「iWorld」と記述):
今回、POWERUpで印象深いのは、VS Code(Visual Studio Code)に関するセッションの盛り上がりです。 ジェシー・ゴリンスキー氏が、VS CodeをPCにインストールしたことがあるか、とセッションに参加している聴衆に問いかけた時に、半数以上が手を挙げたことに驚きました。

Steve Will(以降は、「Steve」と記述):
歴史的に、IBM i で使用されてきた手続き型プログラミング言語では、エディターも非常にシンプルなものであったため、高性能なPCを開発者用に調達する必要はありませんでした。

Rational Developer for i(以降は「RDi」と記述)は非常に強力な開発ツールですが、RDiの能力を発揮させるには、相応に高性能なスペックを有する開発用のPCの調達が必要となります。もちろん、RDiのライセンスの購入も不可欠です。結果として、RDiは利用するための敷居が高くなることから、市場に投入されて25年以上も経過しているにもかかわらず、私たちのお客様の半数以上がRDiを使っていないのが現実です。そう、お客様は、RDiではなく、いまだにSEUとPDMを使い続けているのです。

一方、VS CodeをベースにしたCode for IBM i(以降は「Code4i」と記述)は、開発者に多くをもたらす最も生産的なツールです。Code4iはブラウザからアクセスできるので、開発者用PCの要件として高い性能は必須ではなくなります。しかも、Code4iは非常に簡単なのです。だからこそ、多くの方がCode4iを手に取っているのです。

長年にわたり、「学生たちがRPGを簡単に学べるようにしてほしい」という要望を、私たちは数多く受けてきました。今は、Code4iをダウンロードしてVS Codeに入れさえすれば、学生の皆さんは速やかにRPGを学び始められるのです。

さらに、現在トレーニング中のLLM(大規模言語モデル)にCode4iを接続することで、将来的には「リクエストをAIモデルに送信」すると、「AIモデルがコードを生成」して、「生成されたコードをVS Codeに戻す」ことができるようになります。

VS Codeのアーキテクチャーには、AIモデルやLLMとのコミュニケーション機能が組み込まれているため、今お話ししたようなやりとりの実現は容易なのです。IT業界自体がそのような手法の採用に向かっているため、私たちもきっと、同様の仕組みを適切な方法で構築できるでしょう。

Douglas Gibbs(以降は、「Douglas」と記述):
もうひとつ、VS Codeで重要なのは、若い開発者が既に別の開発言語用途でVS Codeを知っていることです。だから、企業が若い開発者を探す場合、オープンソースの開発者を探すという選択肢もでてくるのです。

まず、若い開発者にCode4iを使ってもらうのです。そして、彼らがフリー・フォーマットのRPGを読むようになれば、VS CodeでPerl、PHP、Javaのプログラミングを行うように、RPGを使い始めるようになるでしょう。

iWorld:
現在、IBMは、RDiよりもVS Codeに力を入れているように見受けられますが?

Steve:
そのように見えるのは、VS Codeを積極的に利用しよう、というエネルギーの多くが、IBMの外部からもたらされているからです。IBMの社内にも、VS Codeの更新に携わる者が何名かいますが、IBMの外部にはVS Codeの更新を行う人々のコミュニティーがあり、そのコミュニティーにおける成果がCode4iに組み込まれているのです。一方、RDiの場合、IBMの外部で私たちを助けてくれる人は残念ながら存在しません。その結果、IBMがRDiよりもVS Codeに力を入れているように見えるのでしょう。

若いプログラマー達がIBM i でのプログラミングのためにVS Codeを使用しているだけでなく、IBM iのためにCode4iを強化してくれているという点で、私たちは非常に恩恵を受けています。これこそが、オープン・プロジェクトというものであり、オープン・テクノロジーの醍醐味です。

iWorld:
POWERUpで開催されたセッションの中で、VS CodeにIBMのSWMAが必要か?という質問も、IBM側から飛び出していましたが?

Douglas Gibbs氏


Douglas:

そうそう、オープンソースですからね。今は、IBMのSWMAのサポートではなく、コミュニティーのサポートを受けているのです。

iWorld:
もちろん、オープンソースを使うことに不安を感じる人もいると思います。そのような人々は、IBMに不具合について問い合わせができないことに不安を覚えているのでしょうね。

Douglas:
そうですね。でも、これが新しい世界なのです。VS Codeの問題が提起されると、ほとんどの場合24時間以内に修正されているのですよ。リアム・アレン(ロチェスター研究所の開発者)やIBMの誰かが問題を修正することもあれば、世界中の誰かが修正することもある、なぜならコードが良くなれば、全員が恩恵を受けるからです。

VS CodeとSQL、そしてAI

iWorld:
なるほど。日本でも、もっと多くの人々にVS Codeを使ってもらうべきですね。

ところで、日本では、IBM i でSQLを利用する人が多くないのですが、米国はいかがでしょうか? SQLもVS Codeで利用できるのでしょうか?

Douglas:
ええ、VS CodeにはSQLの拡張機能があって、SQLを埋め込むことができます。スコット・フォレスティ(ロチェスター研究所のDb2 for i のアーキテクト)と彼のチームは、IBM iに携わる人々のために一生懸命開発に取り組んでくれました。

iWorld:
今、Fortra社による市場調査の結果を見て驚いたのですが、米国ではSQLは非常に人気が高く、IBM iユーザーの79%が、IBM i用のSQLを使っているそうですね。

昨年のiMagazine社の調査によると、日本でSQLを採用している開発者の人数が増加しているとはいえ、その割合は27.3%だったのです。

Steve:
おそらく、原因の一端は、SQLを簡単に利用できるようにするツールが無いからだと思います。したがって、日本の皆さんがVS Codeを使用するようになれば、SQLを日常的に使用することへの移行も容易になると思います。

iWorld:
ところで、実際のところ、DDS(旧来のデータベース記述)を使っている古いRPGプログラムはかなり多いのでしょうか?

Steve:
DDSこそが、私たちが取り組まなくてはならないモダナイズの1つであり、私がLLMのコード・アシスタントをやりたい理由の1つでもあります。私たちのコード・アシスタントは、モダンなRPGだけでなくモダンなDDSもできてこそ、真に優れたものになると思っています。

iWorld:
なるほど。VS Codeの取り組みがAIにもつながってくるわけですね。これは楽しみです。

最後に、日本のIBM i ユーザーへのメッセージをお願いします。

日本のIBM i ユーザーに向けてのメッセージ

Steve:
私たちは、常にIBM iの次のリリースに投資しています。IBM i 7.5の一般公開から2年が経ちました。通常、IBM iのメジャーなリリースの間隔はおおよそ3年です。したがって、来年の今頃は、私たちはもっと大きな機能について会話をしているかもしれません。

Douglas:
世界中でIBM iコミュニティーへの関心が高まりを見せているということを、付け加えたいです。

今週は、ここフォートワースで過去最大のPOWERUpカンファレンスが開催されました。昨年は、ヨーロッパで最大規模のCOMMONカンファレンスが開催され、今年も大規模なカンファレンスが開催される予定です。

インドでもCOMMONとCOMMONワークショップを開催できるようになりました。アジアやオーストラリアでも関心が高まっています。プラットフォームだけでなくコミュニティーも成長し続けているのです。

iWorld:
実は、現在、COMMONを日本に招聘するための準備を始めているところなのです。

Douglas:
COMMONの日本での展開も楽しみですね。それ以外にも、現在無料で開催しているウェビナーの「IBM i Guided Tours」を日本でも展開できるように検討を始めています。

「IBM i Guided Tours」はIBM iの「何か」について、毎週違うトピックをとりあげています。今日はこのPOWERUp会場のエキスポ・エリアからライブ・ディスカッションをお届けしました。日本でもテスト開催できるか試しているところです。どうぞお楽しみに!

iWorld:
本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

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