2024年7月9日、日本アイ・ビー・エム株式会社は、IBM Power ハードウェアの機能拡張を発表しました。
今回の発表は、発表済みのPower10プロセッサー搭載サーバーに搭載されるNVMeやI/O周りのカードの追加発表が中心です。本記事では、特にIBM i 搭載のスケールアウト・サーバーをお使いの皆様に影響がある内容をピックアップして解説いたします。
なお今回発表の機能拡張、新しいフィーチャーは、2024年7月19日から利用可能になります。
IBM Power10 サーバーで使用可能な新DDR5 DDIMMメモリー
2つのDRAMポートを備え、DDR4 DDIMM(Differential DIMM)メモリーと比べ、 バンド幅やエネルギー効率、ロードのレイテンシーが大幅に向上する、新しいDDR5 DDIMMメモリーがPower10プロセッサーを搭載するIBM Power サーバーで利用が可能となりました。DDR5 DDIMMメモリーは、容量が 64GB / 128GB / 256GB / 512GB となります。また、最上位機種であるE1080でのみ、1024GB(1TB)DDR5 DDIMMメモリーも利用可能となります。
ただし、先日発表されたS1012には DDR5 DDIMMメモリーは搭載できませんのでご注意ください。また、同一筐体・同一ノード内では、DDR4 DDIMMメモリーと DDR5 DDIMMメモリーの混在はできません。
さらに、2024年11月12日以降、S1012搭載用を除く全ての DDR4 DDIMMメモリーの新規オーダーができなくなることも併せて発表されています(MESオーダーのみ可能)。 今回のDDR5メモリーの最低容量が64GBですので、今年の11月以降S1012 4コア・モデルを除く全てのIBM Powerのスケールアウト・モデルにおける最低メモリー容量は64GBとなるわけです(なお、S1012 4ocreモデルのみDDR4になりますが、32GB構成は可能)。
新規 NVMe Enterprise/メインストリーム SSD PCIe4 U.2 モジュール
Power10プロセッサー搭載サーバー登場とともに、IBM Power サーバーの内蔵ディスクはすべてNVMeドライブのみとなったわけですが、今回発表されたEnterprise NVMe(1.6TB/3.2TB/6.4TB)は型番変更であり、製品仕様と価格に変動はありません。800GB Enterprise NVMeについては型番変更は無くそのまま販売が継続されます。
また、今回新たに15.3TB、1DWPDの大容量メインストリームNVMeもIBM iにて利用可能となりました。今回発表のメインストリームNVMeは、これまで1つであったName Spaceが複数作成できるようになったため、大容量で使用する要件の場合は良い選択肢と思われます。ただし、IBM i 利用の場合、現時点*ではロードソースデバイスにはなりませんので、Enterprise NVMeとの併用が必要となります。(*近日対応予定)
NVMe 拡張ドロワーにおけるマルチパス・サポート
S1012やS1014の4コアでは拡張ドロワーは接続できませんが、それ以外のモデルで接続されたNED24 NVMe Expansion Drawer (#ESR0) において、ファームウェア:FW 1060を適用する事によりマルチパスが有効になります。これにより、RAS機能、デバイスのパフォーマンスが向上します。
SAS テープHBAアダプターの機能拡張
IBM i でテープ装置を利用する際に必要となる #EJ2B/#EJ2C PCIe3 12Gb x8 SAS Tape HBA Adapterにおいて、従来のLTO-7, -8, -9に加えて、LTO-5, -6のテープ装置もサポートされるようになりました。
ここで重要なのは、LTOテープの下位互換性です。2024年6月で販売を終了したLTO-7までのドライブは、1世代下のメディアでの読み書き、2世代下のメディアの読み込み互換があったのに対し、現在のLTO-8、LTO-9ドライブは、1世代下のメディアの読み書き互換しかありません。さらに、LTO-7ドライブは中古市場にも、あまり出回っておりません。
例えば、古いIBM Powerサーバーの置き換えを検討されている場合で、お使いのテープがLTO6であった場合には、最新のIBM Powerサーバーに接続可能なLTOテープ装置(例えばLTO8)ではLTO6の読み込みができませんので、データの移行方法を考える必要があります。今回、#EJ2BアダプターでLTO-6も接続可能になりましたので、上述のようなデータ移行に際して既存のLTO-6ドライブを一時的に接続して利用することができるのです(LTO-6テープは既に終売しておりますので、IBM Powerサーバーの置き換え後の継続利用は推奨いたしません)。
また、AIXをお使いの方にとって、LTO-5, -6, -7, -8 のテープ装置の直接接続をサポートする新しいアダプター PCIe3 SAS Tape/DVD Adapter Quad-port 6Gb x8(#EJ30/#EJ31)が発表になったのは朗報です。
2024年1月初旬、AIXでサポートするSAS Tape Adapterが営業活動終了し、AIXでLTOを接続するにはFiber接続のみとなり、しかもSANスイッチも必要となりました。今回の新しいアダプターの発表は、多くのユーザーから届いたSAS Tape Adapter復活の要望が現された形になります。
その他の発表
- PCIe 4-port 1 GbE Adapter(#EN2Y/#EN2Z)の発表
現在S1014でのみ利用可能であった「#5899 PCIe2 4-port 1GbE Adapter」の後継製品で、S1022, S1022s, L1022, S1014, S1024, L1024で利用可能かつ、廉価になります。これに伴い、#5899は近日終売になる見通しです。 - Power S1012 サーバーでも Live Partition Mobility (LPM) をサポート
ただしS1012 1コア・モデルは対象外です。AIXをお使いで、S1012をEdgeサーバーとして利用する場合に有効な機能となるでしょう。
Power9のActivationフィーチャーの終売
本体はすでに営業活動を終了しているPower9搭載サーバー:S922 (9009-22A/22G), S914 (9009-41A/41G), S924 (9009-42A/42G), E950 (9040-MR9), E980 (9080-M9S) において、プロセッサーならびにメモリーのActivationフィーチャーが2024年12月31日をもって営業活動を終了することが発表されました。
これにより、Power9搭載サーバーでは、プロセッサーやメモリーの追加ができなくなります。
下図は、IBMへの聞き取りにより編集部で書き起こした、IBM Powerスケールアウト・モデルにおけるライフサイクルの目安となります。(本図は、iWorld編集部作成のものであり、IBMがその内容を保証するものではありません。)
今回のActivationフィーチャーの営業活動終了の発表はおおよそこのライフサイクルに沿ったものと思われます。Power9サーバーでプロセッサーやメモリーの増強が必要な場合には、お早めの手配をご検討ください。