去る2月13日、IBMからPOWER9プロセッサーを搭載した新しいPower Systemsミッドレンジサーバー群が発表されました。
今回搭載されるPOWER9 プロセッサーの大きな特徴は、次世代の I/O 規格を全面採用した点にあるといわれています。具体的には、PCIe Gen4、NVMe Flash、CAPI2.0、DDR4メモリーなどの超広帯域テクノロジーに対応することにより、より高速なデータ転送を実現し、システム内部ならびにシステム間接続のボトルネックを解消、結果卓越した高速処理を可能にしています。
このPOWER9プロセッサー搭載のAC922は昨年の12月にすでに発表になっておりますが、これはNVIDIA の“Volta” Tesla GPUを搭載したHPC/AI向けというある意味特殊用途向けサーバーであったため、POWER9搭載の汎用サーバーの登場が待たれておりました。
今回発表になったのは、1または2ソケット、2Uまたは4Uのフォームファクターで提供される“スケールアウト”モデルで、具体的な型式でいえば、IBM i、AIXならびにLinuxを搭載可能なS922、S914、S924に加え、Linux専用機のL922、そしてSAP HANAに最適化されたH922とH924というラインアップになります。モデルのネーミングルールはPOWER8と同様、S914であれば=S(スケールアウト・モデル、その他L:Linux専用モデル、H:SAP HANAモデル)+9(POWER9プロセッサー)+1(ソケット数)+4(U数)となっていますので、どのモデルがどのPOWER8サーバーの後継かは容易に判別がつきます。
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IBM i ユーザーに一番数多く出荷されたS814の後継機はS914になるわけですが、このモデルもPOWER8と同様4/6/8コア(ソケット)で提供され、4コアがP05、6/8コアがP10になります。4Uのラック搭載型に加え、従来通りタワー型も提供されます。拡張I/Oドロワーは6/8コアのみでのサポートというのも従来と変更がありません。
4コアマシンのHDDはMAX10本まで、POWER8と同じ283GB 15rpm、571GB 10krpmなどが格納可能です。
DDR4 RDIMM採用のメモリーは4コアで最大64GB、6/8コア機では最大1TBと容量だけなら旧マシンと変わりませんが、ほかの2ソケットモデルでは最大4TBまで搭載可能となり、従来の2~4倍のメモリー容量で、2ソケットサーバー市場での優位性を発揮します。
またI/O周りではPOWER8サーバーでも採用されていたPCIe Gen3に加え倍速のGen4もサポート、そのほかNVMe Flashドライブのサポート(IBM i はサポートなし)などにより、POWER8時代よりも約1.5倍のパフォーマンスを提供するといわれています。(CPWやrPerfなどの具体的なパフォーマンス指標は後日2月後半に発表になるそうです。)
その他POWER8サーバーとPOWER9サーバーの比較は下図をご参照ください。
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ソフトウェア周りに目を向けると、この新モデルでは、AIXは6.1以降、IBM i では7.2以降がサポートされます。
また今回特徴的なのは、以前から提供されていたPowerVMがすべてのスケールアウト・モデルにあらかじめビルトインされているという点です。クラウド/モバイル/仮想化といった用途に出荷時から最適化されたサーバーとして提供され、今後のサーバー用途の拡大にいつでも対応可能となっているのです。
一方、IBM i ユーザーであれば気になる点がいくつかあります。
まずv.24通信などでよく使われる#EN13 2回線通信アダプターは昨年大幅に値上がりしたものの、最新のPOWER9でもサポートされることが判明しました。S914であれば本体内に4枚まで格納可能というのはPOWER8モデルと変わりがありません。テープ、メディアについても、POWER8で外出しになってしまったテープ装置が内蔵に戻ることはありませんでした。さらに今回はDVD装置も内蔵ではなくなり、外付けメディアエンクロージャーに格納するか、ポータブルDVD装置をUSB経由で接続するかの形態となります。ソフトウェアをメディア出荷する際にはDVDの構成漏れがないように注意しなければなりません。
そんな中で、RDXについては内蔵することも可能になり、今後バックアップ・メディアを何にするかは、従来通りのテープか、RDXか、はたまたクラウド上にとるか、等々悩ましい選択となりそうです。
また今回はスケールアウト・モデルのみの発表でしたが、今年の春から後半にかけ順次、Linux専用サーバー(LCモデル)やE880CやE850Cの後継のエンタープライズ・モデル(クラウド・モデル)の発表も続くものと思われます。
IBM i 30周年のお祝いの年にハードウェアがフルラインナップで刷新される、まさにメモリアル・イヤーになりそうです。
余談ですが・・・・
新製品にはたいてい開発コードネームがつけられている(古いところでは、AS/400がシルバーレイクと呼ばれていたのはよく知られた話です)ものですが、今回発表のPOWER9搭載のスケールアウト・モデルは「ZZ」という名前がついていたそうです。
また今後続くモデルも「Boston」「Zeppelin」「Fleetwood」・・・・開発チームのどこかに70~80年代のアメリカンロックのマニアがいるに違いありません。
参考情報
次世代のテクノロジーで構築されたクラウド対応サーバー – IBM Systems Japan blog
※本記事は情報入手次第、都度アップデートしてまいります。