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2023.10.02
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「PowerVS構築の世界」 第2回

「PowerVS構築の世界」 第2回
「PowerVS構築の世界」 第2回

前回記事はこちら

前回の記事では最近のIBM Power Systems Virual Serverの概要や、構成時の検討ポイントから、ネットワーク構成についてまでご紹介しました。今回はその続きとなります。

第2回

2-2. バックアップ方式:IBM Cloud Object Storage (ICOS)、VTLアプライアンス

PowerVSでのバックアップ方式はIBM Cloud Object Storage (ICOS)を利用する方法とVTLアプライアンスを利用する方法の2つがあります。また、この2つのパターンは利用せず、ディスク上(SAVF)にデータを保管し夜間にオンプレミスのNASにFTPで転送する方法を採用しているお客様もいらっしゃいました。

ICOSを利用する方式は、IBM i上の仮想テープ装置に保管したイメージカタログ(IFSオブジェクト)を、IBM Cloud Storage Solutions for IBM i(CS4i)のコピーコマンドでICOSへ転送するといったものです。この操作では媒体のマウント、仮想テープへの保管、媒体のアンマウント、ICOSへの転送コマンドといった手順を踏む必要があり、今迄テープバックアップをしていたお客様にとっては自ずとバックアップ運用が変わり、バックアッププログラムの改修が必要となります。

そこでBackup, Recovery, and Media Services (BRMS)とCS4iを連動させる事でこれらの手順を簡素化させる事が出来ます。(BRMSはオンプレの場合は有償ライセンスとなりますが、PowerVSには標準でバンドルされており利用する事が出来ます。)具体的にどう簡素化されるかというと仮想テープ装置や媒体作成はBRMSが自動で行い、媒体への保管、ICOSへの転送までを一連で実行する事ができるようになります。ICOSへ転送した媒体ボリュームはBRMSのインベントリーで管理できます。媒体ボリュームIDはQXXXX(XXXXは一意の数字)で作成されますが、これらのボリュームIDをユーザーが意識する必要は全くありません。BRMSを利用した事がないと不安になるお客様もいらっしゃるかもしれませんが、この構成に必要なBRMSの各機能ポリシーはサンプルが自動で生成され、そのサンプルをユーザー側でカスタマイズするだけなので難しく考えなくても十分理解できる内容です。最終的にカスタマイズしたバックアップ用の定義(制御グループ)をBRMSのバックアップ開始コマンドで実行するだけなので、バックアッププログラムの改修も最小限で済みます。

ICOS利用時の構成についても触れますが、今迄はICOSへアクセスする際にIBM iとICOSの間にリバースプロキシーを経由する方式がオーソドックスな方法でした。最近ではVPCのVirtual Private Endpoint(VPE)とDNSサービスを組み合わせる方式で構成する事も出来るようになりました。これらはVPCのコンポーネントとDNSサービスのみで設定が可能ですので、リバースプロキシーのようにサーバーを構築する手間が不要であり、その後の保守が必要のない点はメリットであるといえます。

VTLについて述べます。ICOSは約2TBまでの転送が推奨とされています。それ以上のデータを保管する必要があるのであればVTLアプライアンスの利用を検討下さい。VTLはオンプレミスでも実績のあるFalconStor VTLが提供されます。VTL製品ですので、今迄のテープ装置と同様に利用する事が出来ます。実際にはLinux用の区画をオーダーする事になりますので月額費用がICOS利用と比べると格段にあがります。

2-3.データ移行手段:FTP、HAツール、VTL

オンプレからオンプレへの移行では当たり前まえだった物理テープによる移行が出来ない為、どのようにデータを移行するかを事前に検討しておく必要があります。考えられる3つの方法をご紹介します。

A.FTPによるデータ移行

時間や手間はかかりますが、コストがかからず移行出来る最もオーソドックスな方法です。IBM i上の仮想テープ装置やSAVFにデータを保管してFTPする事になりますが、一時的にディスク容量が増えるため、移行元IBM iのディスク使用率(空き容量)を考慮する必要があります。移行前にライブラリ毎の容量の分析を行い、容量が足りない場合はディスク整理の実施などを検討して下さい。

B.HAツールによる移行

FTPは大容量のユーザーにとっては非現実的な手段な為、HAツールによる移行も考えらえます。データ移行する為だけの短期ライセンス契約を用意しているベンダーもあります。ライセンス費用や導入費用、現行機への導入といった手間もありますが、大容量ユーザーにとっては現実的なデータ移行方法です。

C.VTLを利用した移行

上記のバックアップ方式にも書いたPowerVS VTLを利用する方法も考えられます。移行元のIBM iにiSCSIを構成しPowerVS VTLと接続するといった方法です。IBM i では2年前にiSCSIがサポートされるようになりました。iSCSIなので移行元IBM iとPowerVS VTL間でネットワークさえ繋がっていれば接続する事ができ、PowerVS VTLに直接バックアップを取る事が出来る点は非常に有効な手段だと思います。
ただし、IBM iのiSCSI用の個別PTF適用が発生する為、オンプレIBM iへの影響も少なからず発生します。バックアップもWAN越しになるので保管に時間がかかる可能性もあります。

PowerVSを検討する上での3つのポイントをご紹介しました。これらを事前に検討しておくことでPowerVSへのスムーズな移行と移行後の運用が出来ると思います。これらのポイントを事前に検討する必要がある事をご認識下さい。

PowerVSのバックアップ手段のひとつとしてIBM Cloud Object Storage (ICOS)をご紹介しましたが、実はICOSには意外と知られていないであろう注意事項もあります。次回3回目はこの辺りを解説します。エンジニアの方必見です。

*株式会社アルファー・コミュニケーションズ

株式会社イグアスの100%子会社。
企業のDX/データ活用のニーズに対応すべく、業務と技術に精通したエンジニアが、新しい技術を取り入れながら、お客様を支援するクラウド・サービス事業と、IBM i(AS/400)の基幹および業務システムを中心に、お客様の業務効率の向上、経営・IT課題の解決をご支援し、システムの立案から導入、構築・アフターフォローまで一貫したサービスを提供するIBM i 関連事業の二つの柱でお客様のイノベーションに貢献するエンジニア集団。

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